2014年4月30日水曜日

愛の新世界 New Love in Tokyo







1994年公開、高橋伴明監督の「愛の新世界」はアラーキーの写真と島本慶のエッセイ(風俗嬢の声を書いている)を融合させた写真集を映画化した作品。
友達と夜パーティーに繰り出して、男の子たちと騒いで朝始発で帰る!っていう、週末のあの感じはやっぱり少しセンチメンタルになる。その夜を過ごしている時にはどうも感じないけど、あとからあの時はああだったね。なんて、話したりすると一晩の中でいろいろストーリーが眠ってて。この作品はその思い出を再体験している気持ちになれる、女に生まれて良かったなと思える20代の青春映画。

アラーキーの撮った砂羽さんの写真が交わり合いながらストーリーは進んで行く。女優を目指し劇団員として活動しながら、「演技の肥やしになる」という理由でSMの女王様を仕事としている主人公(鈴木砂羽)は、ある日同じ雑居ビルの中で出会ったホテトル嬢(片岡礼子)と意気投合、彼女はいつかここから卒業して将来有望な男と結婚する事を願っている。二人はたまに夜の街に繰り出して遊びに行くようになる、この夜の遊びが少しバブリーさを感じる遊び方をしてて、その時代をリアルタイムで体験していない私には凄く面白い。例えば、カジノ、ホストクラブ、オカマバー、ヒップホップ系のクラブとはしご、そこで捕まえた男とスポーツカー2台でふざけてレースしながら六本木の高級そうなバーへ、口説き落とそうとしてくるのを「愛のないセックスはしないの」と冗談ぽく言って、2人で走って渋谷まで戻って、また一杯。うん。この感じこの感じ、夜の遊びって本当に楽しい。90年代の渋谷センター街も貴重。

この作品で鈴木砂羽さんは女優デビュー、20代後半の砂羽さんの存在感と美しさを切り取っている。その他の出演者もとても豪華、荒木経惟、阿部サダヲ、萩原流行、松尾スズキ、田口トモロヲ、宮藤官九郎、杉本彩、などなど。

最近、六本木から渋谷まで歩いていたら無性にこの作品を想い出して。さらにその1週間後に新宿を歩いてたらアラーキーと砂羽さんのロケ中に遭遇するというミラクルでした。







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Sawa・愛の新世界―鈴木砂羽写真集

2014年4月17日木曜日

女虐 Naked Blood






 女虐は佐藤寿保監督が1995年に制作したオリジナルビデオ映画。(ピンク映画)海外での作品としての評価は高く、パリのエトランジェ映画祭にて上映されている。  
 
佐藤監督の「血」や残酷描写はチープだけど観るにはちょっと気合いがいる、でもそんな気分にしてくれる映画はなかなかない。阿部サダヲ演じる主人公の青年が痛みを快楽に変える薬"MYSON"を作りだす。彼の母親は科学研究者でこの薬を母の実験の被験者女性3人(愛禾みさ、林由美香、桐原三果 が演じている)に無断で投与してしまう。“痛みを快楽に変える”という事で被験者の内2人は些細なきっかけで自分自身を痛めつけだす。林由美香演じる主婦は料理中に指を切ったらあら、気持ちいい!天ぷらの衣を自分の手につけ高温の油の中にズボッ、ちょうど良く揚がった手をパクリ。まだまだ足りない、もっと気持ち良くなりたいと女性たちの行為はエスカレートしていく。

後、佐藤監督は「藪の中」で一般映画の世界へオムニバス映画「乱歩地獄」の”芋虫”は監督の感覚を感じる事の出来る見やすい一作としておすすめ。



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2014年4月16日水曜日

Prinz in Hölleland プリンスインヘル



 
 プリンスインヘルは監督ミヒャエル・シュトックが仲間内で作った自伝的インディペンデントムーヴィー。公開は1993年。

  舞台はベルリンの壁崩壊後のクロイツベルグ。当時、この地域は不法占拠者、パンクス、ジャンキー、同性愛者のたまり場だ。現在でも左翼政党、”緑の党”の本部があり色々な国から来たリベラルな感覚を持った若者が自分たちの 今しか使えない時間を余す事なく謳歌するために集い遊ぶエリアで住民の平均年齢はベルリンで最も低い。この作品は壁崩壊後のこれから何かがはじまりそう!という熱気とこれからどうなっていくんだろう、という不安を抱えた当時の政治情勢と若者によく見られる矛盾を内包したロミオとジュリエットのような悲しいラブストーリーである。
 物語は道化師が地下で行っている不気味な人形劇と主人公たちのストーリーとリンクしながら進んでいく、主人公はゲイのカップル、シュテファンとヨッケル。シュテファンは強い左翼思考の持ち主で、ヘロイン撲滅キャンペーンを掲げている。ある日、2人で散歩中にヨッケルが警官と路地裏でセックスをし、シュテファンは「警察の犬か!」と怒り二人の関係は悪くなってしまう。その反動からヨッケルはシュテファンが最も嫌いなドラッグ、ヘロインに手を出してしまい・・・物語は地獄行きとなる。
 この作品の最も注目したい所は、時代の変わり目で混沌としていた当時のリアルなベルリンのゲイカルチャー、ナイトライフ、ドラッグ、ネオナチのあり方を観れる唯一の作品だという事。さらに、音楽はEinstürzende NeubautenのAlexander Hackeも参加。93年にfilmarbeitenという映画音楽をまとめたアルバムを限定リリースしている。私がもし、この作品に出会っていなかったらベルリンには行かなかっただろうし、そこで生活した後でも断言できるベルリンのアンダーグラウンドカルチャーに触れられる素晴らしい映画だ。